“防戦売買。”
TradingViewのフォロワー様からOPTIONオプションについてのご質問をいただきました。
質問“いつもオプションの解説ありがとうございます。参考にさせていただいております。OPTIONオプションのストライクポイントのレベルでは、防戦の売り買いが起こりそれはガンマ・プレイであるとお教えいただきました。そのガンマプレイについて説明して欲しい。”との要望がありました。
ガンマプレイのトリガーとなっているガンマとは、オプション投資の際のリスク指標のひとつで、原資産の価格変化に対するデルタの変動率のこと。デルタ、セータ、ベガ、ロー、、、とだんだん難しくなってきましたね。
FXをやっていればだれでも気づくオプションに絡む動意の要因となるオプショントレーダーの行動原理を分かり易くご説明していきます。
オプションとはなにか?特に通貨オプション
オプションに関してもっと専門的に勉強して積極的にオプションを活用した戦術をしたい方は、オプションに関する分かり易いモジュール「オプショントレードマスター」が出ているので、奮発して私のコースを買って自分で勉強してね。
まず通貨オプションとは何か?例えばUSDJPYドル円について考えてみましょう。
通貨オプションとは、通貨を買うか、あるいは売る「権利」を売買することです。
現在(2022年11月25日)、ドル・円は139.14円。ここから来週どちらに動くかは、だれにもわかりません。
ヘッジしたいひと。ヘッジャー側の思惑とは?
輸出業者Aは、もしかしたらドルが下るのではないかと不安に思っている?かもしれません。
そのヘッジのために、勿論現物(キャッシュ)で米ドルを売っているが、オプションという保険を使って一部をヘッジしたいはず。
138円がぎりぎりの損益分岐点。
そこでドルのダウンサイド・リスクをヘッジするために、ドルのプット・オプション(ドルを売る権利)を138円のストライク・プライスで、一定のプレミアム(保険料)を払ってB銀行から購入する。
1) 心配した通りドルが下りだし、137円まで下落した。
A社は、B銀行に対して138円でドルを売る権利を有するから、当然それを実行し(B銀行に138円でドルを売る。)事なきを得た。払ったプレミアムは保険料としては安いものであった。
2) ドルの下げは杞憂で、141円までドルが上昇した。
A社は、B銀行にキャッシュで141円でドルを売ることが出来るので、オプションの138円でドルを売る権利を放棄すればよい。払ったプレミアムは保険料としては安いものであった。
このように、実需の業者(この場合は、ドルが下がると困る輸出業者)にとっては、通貨オプションはヘッジ手段として大変有意義なツールである。
リスクをとってヘッジを受ける側の思惑
さて、プレミアムを受け取ってドルのプット・オプションを売ったB銀行はどうするでしょう?
前提として、オプションを売ったリスクは自分でマネージするとする。
1) ドルが138円以下になり、さらに下落すればするほどB銀行は無限の損失リスクを負うことになる。何もしないで放ったらかしにしている間に128円までドルが下落したとすると、A社から138円で買わされたドルを128円で市場に売る羽目になる。
そんな馬鹿なことは出来ないから、B銀行はドルが128円に近づくと大変悩むことになる。
A社から138円で買わされる米ドルをどうするか?
上の例のようにストンとドルが落ちるのであれば、単純に138円で現物キャッシュの米ドルを売っておけばよい。でもドルを売った後、もし141円まで戻ったらどうするか?
力ずくで138円を切らせない努力をする。これが、よく市場で目にする“オプションがらみの防戦買い。”という現象です。
2) ドルが138円を切らなければB社は何もしない(この138円のストライク・プライスより上で、キャッシュで売れるから。)ので、A銀行はB社から受け取ったプレミアムがそっくり利益となって残ることになる。
かつて市場で取引されたオプション取引に、レンジ・バイナリー(ダブル・ノータッチ・オプション)やラダー・オプションという物があります。
これは、相場がある期間一定のレンジに留まるとの強い相場観を持ち、そのレンジが破れないだろうとの思惑に賭けるものです。
138-141円のレンジにしばらく留まるという合理的な根拠があり、レンジ・バイナリー・オプションを購入したとしよう。
実際に決めた期間に、相場がこのレンジに留まればペイアウト(プレミアム)が入ってくることになる。
ところが、一度でも138円以下にドルが下がるか、逆に141円以上にドルが上がってしまうと、儲けはゼロになる。
このレンジ・バイナリー・オプションは、ヘッジファンド、GSゴールドマンサックスなどの投資銀行とか、中央銀行(特に中国)の誰かが大量の資金に任せて仕掛けてくることが多い。
そして、このレンジの上限・下限に近付くと、市場でよく目にする“防戦売りや防戦買いが起こるのです。
何せ一度でも138-141円のレンジを越えてしまうと、“1円も儲からない”のですから、我々の想像を絶する必死さで立ち向かって来る、、、ということを想像して欲しいのです。
この防戦売り・防戦買いが上手くハマると、面白いくらい桁違いに儲かります。
140.70から140.85まで、現物キャッシュで“死ぬほど売って”、防戦に成功して米ドルが下がれば、今度は売った現物キャッシュを下で買い戻せばいい。
138.30から139.15まで、現物キャッシュで“死ぬほど買って”防戦に成功してドルが上がれば、今度は買ったキャッシュを上で売り抜ければいい。
兎に角、138-141円のレンジに留まれば、現物キャッシュで“面白いプレーが出来て、その上ペイアウトが手に入る。”のだから、やめられないとまらないかっぱえびせん。とくにアルゴトレード※が台頭してきてより動きにくい、トレンドが発生しずらい相場では、オプショントレーダーの力が強まって、防戦があちこちで行われるようになったように感じます。
レンジをブレイクしてしまったら?
その代わり、年末に近い11月の第4週のように、“まさかのレンジブレイク”の時は、悲惨な状況に。
レンジが切れた途端に防戦で売った分をそっくり買い戻さなくてはいけないし、その時は結構な幅で動くでしょうからかなりの損失に。
防戦で買った場合は、その逆である。
そして、ペイアウトも1銭も入って来ない。
買い手がいれば売り手が必ずおり、みんな同じことを考えているものです。
あなたがオプション攻防を自分のトレードに活用するには
相場で“オプションの防戦売り・防戦買い”が話題(僕が話題にしたら)になったら、そのストライク・プライスと思しき相場の前後では相当抵抗して、すんなりブレイクしないことがある。
ところが、一旦切れるとオプションを売っている連中のヘッジと、キャッシュで防戦を行った連中の怒涛の投げが始まるので、相場の動きが増幅される可能性があることを覚えておいてください。
そのためには、オプションの場所(ストライク・プライス)とエクスパイアー:期日を事前に特定し、トレードアイデアにオプションの攻防を盛り込んでおく必要があります。
オプションの場所を特定する方法
私達にもメリットがあります。大きなオプションはCME:シカゴマーカンタイル取引所に報告する義務が出来たおかげでCMEのサイトでオプション取引(先物はもちろん)を確認できるようになりました。
また、トレーダーズ・ウェブさんのサイト(https://www.traderswebfx.jp/)や、forexlive(https://www.forexlive.com/)さんで確認しましょう。
目立った大きいオプションはかなりの確率で攻防が起こるでしょう。